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YouTubeにDNAを残す 揚出し天ぷら 天ひろ(長崎)

今回の長崎行きの目的は天ひろでの食事と翌夜のハウステンボスでのドローンショー。組み立てたプランは、午後遅くに糸島を出発→出島の長崎水辺の森公園で犬と散歩→天ひろさんで食事→長崎県営常盤駐車場にモーターホームを停めて一泊→翌朝も長崎水辺の森公園で犬と散歩→長崎県立美術館でスタジオジブリ・レイアウト展→諫早に移動して知人とランチ→skype会議→ハウステンボスでドローンショー って感じの2日間。風もなく周辺環境も暗いので条件も良かったのでしょう、日本初の300機がシンクロするドローンショーが想像以上で感動しました。チームプレイに徹して完璧な演技をするアスリートでも応援している気分になってきて、やがてロボットに恋をすることは非常識ではなくなるだろうと思えた瞬間でもありました。

天ひろは今年で50年目、先代を入れたら51年です。2代目の奈良博一さんにはやりたいことがあったのでお店を継ぐ意思はなかったそうですが、高校3年生の時にお父さんを亡くして1年で無理やり代を継ぐこととなりました。その後50年間雨の日も風の日も雪の日も休まずに市場に仕入れに行かれてます。自分が見定めたものじゃないと気に入らない性格です。

たった1年で店を守ることになった奈良さんはどのようにして現在のスタイルを築いてきたのでしょう。

自分は教わり下手なので食べ歩きなどで勉強してきたことをアレンジして身につけてきたと。東京や関西など本当に多くの料理を経験しました。ある日京都 千花さんのことを知り、既にその日は6軒のお店を回ってお腹はパンパンだけど、どうしても食べたと思って18時半くらいに行ってみた。路地の奥を覗いたら「これはいかなきゃ!」と思い深呼吸して入口の戸を開け、予約してないけどいいですか?って聞いたら中からおかみさんが出て来られて「すみません、うちは予約のお客様だけなんです」と言われたので「わかりました、また今度予約して来ます」 その時に中を覗いたら「え?たったこんだけの席数?」と思った。

その店内が頭から離れないままぶらぶらと歩いた。やがてホテルに戻り残念だと思いながら一夜を過ごしました。

気になって気になって仕方ないので翌日朝8時半まで待ってから、お昼だったら大丈夫かな?と思い予約の電話を入れました。

「今日のお昼はやってらっしゃいますか?」『ええ、よろしゅうございますよ』

「一人なんですけど。」『お昼はお一人様は受けてなんです』と言われ仕方なく電話を切った。

しかし、どうしても諦められずに30分ほど悩み「すいません、先ほど電話したものですが、お昼お一人はダメだと言われたのですが、夜はどうでしょう?」『ちょっとお待ちください』と言われてから電話先からの反応がなくなった!

「遅いなぁ」「大丈夫かな?」「そんな広い店でも無いのに、千花さんがどこか出てるのかな~」「それにしても遅いな」「ダメかな」「何席あるのかな」などの呟きは電話口で声となって出てしまっていた。

しばらくして『もしもし』と千花の永田基男さんの声がした。

「実は昨日の夜伺って、予約じゃ無いとダメだと言われ、お昼は一人じゃダメだと言われ、夜は一人で大丈夫でしょうか?」と祈る気持ち。永田さんは『よろしゅうございますよ』と言ってくれました『何時?』と聞かれたので「6時くらい」と答えると『2回転営業なので5時か7時にしていただけると助かります』「それでは5時に伺います」 やった〜!

5時に到着すると『こちらにどうぞ』と指定された席に座り、永田さんが挨拶にこられ『あなたはこういうお仕事の人ですか?』「はいそうです、長崎でこれこれこうお店をやってます。親父が亡くなって後を継いでやってます、こちらのお店のことをとをお聞きして是非食べてみたくて、予約しなきゃいけないところを申し訳ありませんでした!」

『しかし、あなたには参りましたよ〜!』 なんと、予約時の電話の独り言を黙って聞かれていたようです。

『こういうお仕事はどちらのお客さんがお見えになるかわからない、怖いのはこちらの方なんですよ、私たちは店を構えてて逃げるわけにはいきませんから、どういうお客さんなんだろうと、電話の後ろで何か話してる声でも聞こえたら、それから少しでも情報が得られるかもしれないと思い、黙ってずっと聞いていました。あなたは店はそんなに広くなとか色々言ってましたね』と。

今では笑い話ですが、それからずっと可愛がってもらえました。

本人は一度も来られてませんが、千花さんからはたくさんお客様を紹介してもらいました。

舌を鍛えてくれた師匠がお父さんならば、料理人としての師匠は千花の永田基男さんなんです。

天ひろさんにしかない料理。この日の鱧の湯引きも梅肉などはありません。定石みたいなことも疑問や相応しくないと感じれば変える勇気があるということでしょう、なにせ自分がスタンダードですからね。

食べ歩きで得たヒントや学びは盗み取るというよりかは、天ひろ流に解釈して実践投入。自分も楽しみながらお客様の反応はチラ見して修正、自由な発想の天ひろワールドを切り開かれてきたのだと私は想像しています。

そんな奈良さんが骨身を削って取り組んでいるのが2017年9月5日時点で266本の天ひろ調理方法を伝えるYouTube動画。

数年前に体調を崩したことがきっかけとなり、終活として始められました。

身の回りの整理をし始めた時、自分は何も残せてないけれど、これまでの仕事を映像にして伝えることはできるのではないかと。

弟子を取る気は無いし、自分の後継者はいない。ただ死ぬのを待つのではなく自分の生きた証を発信していこうと決めたのです。

動画を見た一般の方が里芋を家族に炊いてあげたら喜ばれたことを伝えたくて、名前しか載せていないYouTubeチャンネルからお店を探し出して長崎まで来てくれたりする。日本全国、海外はスペインからもYouTubeを見た輩が「師匠」と慕って来店してくれることが嬉しい。奈良さんは自身はそのように考えられていないかもしれませんけどYouTubeメディアを活用して、これまでにない形で師弟関係作りを実践されているとしたら凄いこと。リアル指導はないけれど動画を使った技術伝承です。そして感服するのは動画数が毎週増え続ける精神力。もちろん奥様 幾子さんの愛情とサポートがあってのことだと思います。

そのうち動画で学んだ人が、弟子としての承認を得てお店を開くことになれば面白いですね。ホントそうなって欲しい。

補足事項

1、もし私が長崎地元民ならば2ヶ月に1回は通って季節も感じながら楽しみたいところ。

2、天ぷらを食べるお腹を残しながら前半戦を終えるように。

3、いつもあるとは限りませんが、ごま豆腐を是非食べて欲しい。

4、カメラとオモリとのバランス調整がとても難しいステディカムを使いこなす強者カメラマンでもある。

5、奈良夫妻との会話と料理を楽しむお店です。

※写真は事前に内容を説明し、許可を得てから撮影させて頂いてます。(2017年7月24日訪問)

天ひろ

〒850-0831 長崎市かじや町5の4 平源ビル 1F

電話 095-823-7550

営業時間 12:00~13:00 入店  17:00~20:00 入店

休業日 日曜日

必ずご予約をお願いします。営業時間/休業日なども変更される場合がありますからお電話にて確認を

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